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神尾和寿著『地上のメニュー』を読む

神尾和寿著 詩集『地上のメニュー』から思うこと

谷和幸

 

調べたい製品を価格.comで検索するときに、私はwebページ上のどのカテゴリーにそれが属するのか分からなくなってしまう。「AV情報」なのか、音が出るから「オーディオ」になるのか、または「情報家電」なのか。それで思案に費やす時間のことを考えると、とりあえず順番に検索するほうが早いので、そうすることが多い。

私がなぜそのようなことで迷うのかは明白だと思う。現在の電化製品は情報家電にシフトしていて、そのプロセスに種々の製品(コミュニケーションを重視した複雑怪奇なアタッチメント)を生み出しているからである。

現実に古い分類法では追いつかなくなってきている。ではカテゴリーで分類するだけでなく、アナロジーで、例えば視覚的に、性差的、年齢的とか、節電とか、無料とかの共通するコンセプトを補足してやれば比較的分かりやすい世界が開けるかもしれない。

これは電機製品だけにとどまらない。つまり社会におけるわれわれの「共通感覚」の錯綜にほかならない。

 

「共通感覚」について折島正司はこのように言う。

 

それは、「私たちの《生きる》という営為にとつって好都合であったり不都合であったりするような」世界の「意味」を捉える感覚である。世界の意味は、個別の感覚には捉えることができず、個別の感覚がとらえたものをいくら足し算しても決して得られない。「《生きること》にとっての実践的な意味方向」を捉えるこの感覚、「共通感覚」が、意味はないがただ存在するモノを、意味を持って人間と相互交渉するコトに化す。モノはただ端的に物であるが、コトや意味は、行為とその効果との間に生ずるある関係である。したがって、そうしたコトを捉える「共通感覚」は、個別の感覚とはただ違うだけでなく、「位相」を異にしている。三角形や四角形をどんなに変形しても8の字にはならないように、視覚をどんなに修正しても共通感覚を得られない。そして、位相が違うので、このふたつは相互に排除しない。

 

言葉をモノに、コトを意味方向を捉える「共通感覚」のそれに置き換えてやれば詩文(テクスト)の全体を俯瞰できるのではないか? つまり、詩を書く動機に従来の抒情性ではなく、「共通感覚」というコンセプトを捕捉してやれば理解しやすいのではないだろうか、と思う。

この問題を私に痛切に突き付けた詩集が『地上のメニュー』神尾和寿著であった。まず、その中から一篇を紹介する。

 

「金管楽器」

 

駅前では

いの一番にプッシュされていた

ちびまるこちゃんだって

次郎長に比べてみれば

ごく最近の人だ

ずばり現役の人としては

バス・ターミナルを 頭がイカレタ

と思われる人が はげしく強弱をつけて徘徊していた

港では

警察の鼓笛隊パレードに遭遇する からには

今日はちょっぴり特別な一日である

はず

ドラマとは 生涯無縁な大多数の警官たちや

命をかけて悪党と格闘したときの傷跡を背負う ごく一部の精鋭たちも

念入りに死んでいる干物たち

おしなべて

金管楽器

まっすぐな幹線道路

戦後まもなくから舗装がいきとどいている さて

その純白を照らす 静岡県清水市における太陽の

海中へのものすごい沈み方と

いったら

 

この「金管楽器」を読むときに、詩に無数のタグ(共通感覚)がぶら下がっているように見える。まず、「ちびまるこちゃん」と「次郎長」とが何らかの同質の要素をもって存在する「見え方」を想定しなければならないだろう。それはただ単に、存在し合うだけのものだが(これって、日常で見えるもののほとんどが隣のものと色彩的にも意味的にも関係なく存在している)、それを違和感もなく視界に収めてしまう人間の能力?ではないだろうか。隣り合っているのにもかかわらず、それらは影響しない。

「金管楽器」の中にはこのような林立する隣り合わせのむき出しの関係がちりばめられている。「頭がイカレタと思われる人」と「強弱をつけた身体の動き」、「警官の鼓笛隊」と「特別な日にもかかわらず偶然に居合わした私」、「悪党と格闘した傷を持つ警官の精鋭たち」と「念入りに死んだ干物」、「金管楽器」となぜか音的に暗号化された「幹線道路」。それらは林立し、隣り合い、しかも干渉しあうことなく平然と共存する。最後にややエロチックな「純白」(私の視界・精神)を照らして静岡県清水市の太陽が沈んでいく。


エクリは5月17日月曜日午後4時から
場所は「CHUM」姫路市元塩町66 電話079-263-8339

テーマ 神尾和寿著『地上のメニュー』を読む

今回はやさしい言葉で書かれた詩ですが、その奥深いところへみなさんとご一緒にダイブしようと思っています。
2部はみなさんの詩作品の合評会です。

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